城の崩壊

転職をすることになった。それに伴い転居をすることになった。

今住んでいる借家には「作曲部屋」と自分で呼んでいた、DTMに関する機材、楽器を集めた四畳半の部屋があった。自分の理想と財布とのせめぎ合いの中で、防音加工をDIYでやったり機材を増やしたりして作られた言わば秘密基地であり城だった。実際の作曲の成果を振り返ってみれば城を作り上げる労力に全く見合ってはいなかったのだが、少しずつ充実していく部屋を見るのも楽しかった。

 

そんな作曲部屋を今回の引越しの準備のために取り壊している。この部屋の状態がベストだとは思っていなかったので寂しくはないのだが、あれだけ苦労して作ってきたものが無残に崩れていくことに諸行無常を感じざるを得ない。しかし部屋の中に木の骨組みを作ってそこに吸音材としてグラスウールを取り付けるようなこともしているために、虚しさ以上に片付けの面倒臭さに城の主は辟易としている。

 

新居では恐らく凝った部屋はもう作らないだろう。どれだけ色々やっても定在波は無くならないし、「作曲部屋」と言いながらそこでネット動画を見る時間の方が圧倒的に長かったし。部屋の隅っこに小ぢんまりとしたスペースを設けるくらいがちょうどいいのかもしれない。